3日くらいかけて、2017年に米国でIPOした会社をまとめてきました(1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、8月)。
この一連のエントリは、実を言うと今回のためにありました。今年米国で上場した企業をまとめたかったのです。
全部で16社ありますが、色々な基準でこれを並べてみましょう。
まずは現在の時価総額順にみてみましょう。
社名 | 時価総額 | 概要 |
Snap | 159.42億ドル | SNS |
Mulesoft | 28.19億ドル | ネットワーク |
Carvana | 27.35億ドル | 中古車EC |
Cloudera | 25.22億ドル | 機械学習 |
Okta | 20.88億ドル | ITセキュリティ |
Redfin | 18.77億ドル | 不動産テック |
Alteryx | 13.40億ドル | データ分析 |
Presidio | 12.46億ドル | クラウド・インフラ |
Appian | 11.57億ドル | デジタル変革 |
Yext | 11.52億ドル | クラウド |
Blue Apron | 11.05億ドル | 食材EC |
Smart Global | 4.53億ドル | メモリ |
Netshoes | 3.58億ドル | EC |
Tintri | 1.97億ドル | クラウド |
Veritone | 1.38億ドル | 人工知能 |
Shotspotter | 1.02億ドル | SaaS |
Snapが159億ドルというのが圧倒的です。ネットワークを扱うMulesoftが28億ドル、中古車ECのCarvanaが27億ドル、クラウドで機械学習を提供するClouderaが25億ドルと続きます。
続いて、IPOにおいて、株式市場に公開した株の総額である「Offer Amount」の比較です。順番は前と同じ時価総額順に並べています。
自然とさっきの時価総額とかなり比例する傾向にはありますが、やはりSnapが34億ドルと圧倒的に大きいですね。
続いて食材EC事業を展開するBlue Apronが3億ドル、クラウドサービスを展開するPresidioが2.3億ドルとなっています。
ほとんどの企業が1億ドルから3億ドル程度を市場から調達していることがわかります。
続いて、直近四半期の売上高を比較します。
売上高で最も大きかったのはPresidioで、6億ドル以上を売り上げています。
続いてNetshoesが2.6億ドル、Blue Apronが2.4億ドル、Smart Globalが2億ドル、Carvanaが2億ドル、Snapが1.8億ドルと続きます。
続いて、売上成長率の比較です。
こうすると、Snapの成長率の高さが際立ちますね。153%。
中古車ECのCarvanaは142%、Veritonも103%と大きく成長しています。
営業利益率の比較です。まあほぼほぼ赤字なんですが。
ほとんどの企業が営業赤字ですが、メモリの製造をしているSmart Global Holdingsは9.85%、Presidioが2.29%という結果です。
以下、改めて各社の事業内容をみていきます。
Snapはご存知だと思いますが、動画メッセンジャーアプリ「Snapchat」を提供する会社です。
革新的な機能により欧米の若者を中心に強いエンゲージメントを示しているものの、ARPU(一人当たり四半期売上)が1ドルと低いのが課題。
MuleSoftはネットワーク・ソリューションを提供する会社です。
SaaSやAPI、データセンターやパブリッククラウドなどをまたがってつなぐことができる「Anypoint Platform」を提供。
NetflixやAT&T、MasterCardなど1000を超える企業が導入しています。
Carvanaは新しい中古車ECプラットフォームです。検査され、調整された車だけを登録することができ、360度のバーチャル・ツアーによって車内の様子を知ることができます。
購入の際には、ローンなどの相談も行うことができる上、車を自宅にデリバリー(またはピックアップ)することもできるという至れり尽くせりのサービスです。
Clouderaはクラウドベースの分析ソリューションを提供する会社。フラグシップ製品の「Cloudera Enterprise Data Hub」では、企業が蓄積しているデータの分析を柔軟に行うことができます。
Oktaは企業向けのセキュリティソリューション企業。
Oktaにログインするだけで様々なアプリケーションのアカウントを一括管理できる「シングル・サイン・オン」が主要な製品です。その他、二段階認証のためのソフトウェアも提供。
Redfinは不動産売買のためのマーケットプレイスです。
各地域のエージェントが買いたい人を物件に案内するなど、既存の不動産業者がやってくれるようなサービスもあらかたやってくれるようです。
Alteryxは、データ分析のためのソリューションを提供しています。「セルフサービスのデータ分析のための再現性のあるワークフロー」をコンセプトとしており、データ分析における大幅な時間削減が可能なようです。
Presidioも企業向けのクラウドソリューションを提供する会社。その中にはインフラ、IoT、データ分析、セキュリティなどが含まれる他、コンサルティング・サービスも提供しています。
中でも、レガシーな企業のデジタル化を推進する「デジタル・トランスフォーメーション」に特化しています。
Appianのバリュープロポジションは明確で、「デジタル化のためのジェット燃料」をうたっています。
既存企業のデジタル化を支援している、ということですね。「デジタル化時代において、ディスラプトする側に回るか、ディスラプトされるかを選ばなくてはならない」など、パワーワードが満載です。
Yextはとてもユニークなテクノロジー企業で、企業向けのナレッジ管理ツール「Yext Knowledge Manager」を提供しています。
飲食店チェーンなどのリアル店舗をもつ企業がこのナレッジ管理ツールに位置情報などの自社データを入力すると、その内容がGoogle MapsやYelp、Instagramなど100を越える外部サービスと同期されるという仕組みです。
Blue Apronは食材のオンライン配達事業を展開する企業。
プランを洗濯しておくと、1週間おきに食材のセットをレシピ付きで送ってくれます。一食あたりの単価は9ドルほどと、米国としては安価な上、とても健康的で美味しいレシピになっており、都会の忙しい若者世代を中心に人気が出ているようです。
Smart Global Holdingsは、DRAMやフラッシュメモリなど、メモリーの製造会社です。1988年設立ということで、かなりの歴史がある会社ですね。
Netshoesは、ブラジルに本社を置く靴をメインに扱うのオンラインショッピングサイトです。
南米を中心に事業を展開しており、アルゼンチンやメキシコなどでも商品を販売しています。
Tintriもクラウドサービス企業で、企業向けにストレージやデータベース管理ソフトなどをFortune500企業の20%に提供しています。
Veritoneは人工知能を活用したテクノロジー企業で、動画や音声などのデータを処理することによって、中身を分析したり、対応を自動化することができます。
2014年設立という新しい会社で、すでにUBERやマイクロソフト、タコベルなどの有名ブランドから利用され地ます。
ShotSpotterもかなりユニークな会社です。「リアルタイムの銃撃検知&警報システム」を月額サブスクリプションで提供しています。
主要顧客は警察や政治家、学校などで、銃社会のアメリカならではの会社と言えます。